緑内障は何らかの原因で目の中を循環する房水の流れが悪くなり、目の内部の圧力(眼圧)が高くなって視神経を傷害する病気です。緑内障手術は一言で言えば、この眼圧を下げることを目的とする手術です。
レーザー手術と観血的手術がありますが、ここでは観血的手術について説明します。
観血的手術でメインとなるのは線維柱帯切除術(トラベクレクトミー)、線維柱帯切開術(トラベクロトミー)の2種類です。トラベクレクトミーは人工的に房水の排出路を作ってやる術式です。
濾過手術の1種で房水を結膜下にしみ出させて濾過胞を作ります。眼圧を大きく下げることに適していますが、眼圧を調整することが難しく、術後眼圧が下がりすぎて脈絡膜剥離や低眼圧黄斑症といった合併症を引き起こすことがあります。また濾過胞が術後何年経っても細菌感染を起こす可能性があり、細菌性眼内炎の危険性があり続けることも欠点です。そのほかにも60歳以上の有水晶体眼患者では白内障が生じやすくなります。しかしトラベクレクトミーも手術方法やデザインが工夫され、以前に比べて合併症の頻度が下がり、長期間にわたって眼圧下降効果が期待できるようになっています。
トラベクロトミーはシュレム氏管という房水の流出路をトラベクロトームという湾曲した金属の棒を挿入して切開し、房水流出を改善する方法です。トラベクレクトミーのような重篤な合併症を起こすことはほとんどないのが最大の利点です。しかし術後眼圧を大きく下げることには不向きで緑内障の種類によって眼圧下降効果の差が大きいことが欠点です。
トラベクロトミーも白内障手術やシヌソトミーといった手術を同時に行うことで単独で行うよりも眼圧を低くでき、眼圧下降効果も長期に渡って維持できるようになっています。
緑内障手術は手術テクニックの難しさもありますが、手術適応の難しさの方が大きいと思います。特に緑内障の種類や病期の正確な診断が重要で、こうすることで、トラベクレクトミーとトラベクロトミーを効果的に使い分ける事が可能となります。